仕事ができる人は、することよりも「しないこと」を決める。
選択肢が増えると、選ぶまでに時間がかかってしまったり(ジャムの法則)、選ばなかった選択肢に対する後悔や未練が残ったりする可能性がある。
このような選択のパラドックスを回避し、効率的に時間を生み出すアプローチを学べる本を紹介。
仕事ができる人の「しないこと」リスト / 中島孝志
“仕事ができる人というのは、「何をするか」は当然のこと、「何をしないか」を明確に決めて、日々の仕事に取り組んでいます。
中島孝志. 仕事ができる人の「しないこと」リスト. 三笠書房, 2012, p.3
「しないこと」を決めるのは、何を優先するかだけではなく、迷いをなくして生き方を確立することでもある。
不要なものを捨ててミニマリスト(必要最低限の物だけを持つ人)になる感覚に似ているかも。
今回は本書から、すぐに改善できる「しないこと」を6つピックアップするよ。
①「100点」を目指さない
仕事というのは、「タイミング」が生命線です。タイミングを外してしまうと、すべての努力がムダになってしまいます。どんなに努力しても、昨日の新聞は今日売れません。
中島孝志. 仕事ができる人の「しないこと」リスト. 三笠書房, 2012, p.14
仕事で大事なのは、完成度よりもスピード。ベストタイミングで80点を出せるようにする。
LINEやDMの返信も早いと嬉しいよね。
時間効率は”アーティスト”にとってはナンセンスだが、締切・納期があることで作品が完成するのも事実。
ボカロPなら、ボカコレに応募するとき。遅々として進まないと困る。自分もそうだが、完璧主義の人は「現時点での完成形」と納得させるといいかもしれない。(でもやっぱり100点は目指したいよね)
また、時間に余裕があれば、万が一ミスしても軌道修正できるので、先送りはしないこと。
優先順位をしっかりと決めて、最重要な仕事に集中する。
かといって、責任を持って引き受けた仕事が「雑用」だとしても手は抜かない。
②「安請け合い」をしない
仕事ができる人は、「安請け合い」を絶対にしません。相手から「依存」されることを嫌いますし、何よりそれが自分の負担を重くしたり、仕事の質や生産性を下げたりしてしまうことを、よくわかっているからです。
中島孝志. 仕事ができる人の「しないこと」リスト. 三笠書房, 2012, p.45
頼みごとを簡単に引き受けて、自分の負担を重くしたり、仕事の質や生産性を下げたりしてしまったら元も子もない。
この人は断らない、便利屋だ、と思われないように注意する。
また、アポなしで訪問された場合も予定が狂うので対応してはいけない。
以前に書いた「電話が嫌い」に関する話とも共通点がある。
ついでに「頼みごとをする側」のTipsを紹介。
人は一度頼みごとに応じると、次のお願いを断る際に自分の言動に矛盾が生じてしまうため、断りづらくなるという心理が働く。これを利用した交渉術を心理学では、フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)という。
そのため、「ちょっと見学だけ」のはずが、契約をしてしまったり、「ちょっとご飯だけ」のはずが、最後まで致していたり(極端)
このように「ちょっと」という言葉は頼みごとを通しやすくするテクニックに使われているので、このワードが出た瞬間に嫌な予感がしたら、最初から断ることが大事。
③「やる気」を上げ下げしない
本物のプロフェッショナルは、「やる気」がどうのこうのと口にすることはありません。「スイッチが入ろうが入るまいが仕事をする」のがプロです。
中島孝志. 仕事ができる人の「しないこと」リスト. 三笠書房, 2012, p.50
やらないための言い訳ばかりせずに、素早く取りかかる。
また、「できない」という言葉を使う人は自分自身にブレーキをかけてしまうだけでなく、チームで動いている場合、周りの人にも悪影響を及ぼす。
どうせだったら、その思い込みの力をポジティブな考え方に注ぐべき。
仕事中に停電してデータが飛んでしまい、やる気をなくして作業を翌日に回した自分にとって耳の痛い話だけど……
そういえば、毎朝ランニングをしている知人が、「ランニングウェアを着て寝て、朝起きたら、面倒だと考える暇も作らずにすぐ外へ出る」という習慣化のコツを教えてくれた。
やる気だけに依存せず、粛々と仕事をこなすためには、とにかく手(足)を動かすことが必要。
④「素人考え」で仕事を進めない
「わからないこと」には安易に手を出してはいけないのです。もし手を出すなら勉強しなければいけないのです。
中島孝志. 仕事ができる人の「しないこと」リスト. 三笠書房, 2012, p.69
知ったかぶりはトラブルのもと(教訓)
無意味なプライドは捨て、わからないことがあったら、わからないとはっきりと言う。
そして、利口ぶらずに「専門家」へ質問すること。蛇の道は蛇。
⑤「悪口」をいわない
悪口はいわない。
中島孝志. 仕事ができる人の「しないこと」リスト. 三笠書房, 2012, p.89-90
悪口はいってはいけない。
もしいうときは、必ず相手に伝わるものだ。
そう覚悟しておいたほうがいいでしょう。
私も悪口はいわないことにしています。なぜなら、悪口をいった瞬間、自分がその人よりも劣っていることを宣言したに等しいと思っているからです。
本人は無意識かもしれないが、悪口のほとんどは妬みが根本にあると思っている。
本書では”負け犬の遠吠え”と呼んでいた。
悪口を言っている時間が無駄だし、誰かの悪口に同調する必要もない。
そんな暇があったら自己研鑽に励む方が圧倒的に有意義だ。
YouTubeやSNSのアンチコメントの対応に時間を奪われるのももったいない。
ポジティブな発言を心がけたいね。
⑥「結論」を最後にしない
全体像がわかれば、これは3つのポイントで話せるな、といったことがわかります。そうなれば、「ご報告したいことが3つあります。1つ目は……」といったように、まず話の最初に結論を述べつつ、これから話す内容に「道しるべ」をつけることもできます。こうすることで、聞き手は格段に理解しやすくなります。
中島孝志. 仕事ができる人の「しないこと」リスト. 三笠書房, 2012, p.155
聞き手に話を理解してもらうためには、最初に結論から話すことが重要。
「報告が3つ」のようにナンバリングしたり、「最初に、次に、最後に」「かつて、今、これから」「日本では、アメリカでは、中国では」のようにポイントを絞ったりすると話がまとまりやすくなる。
そして、人は忘れやすい生き物なので、繰り返し”ここがポイント”と伝えることで理解が深まる。
また、話の内容が伝わらなければ、人を動かすことができないので、わかりやすくシンプルな表現を使う。
そのために「要するに?」「一言で言うと?」と自問自答する訓練をする。
自分もブログに記事を投稿する際は、分かりやすくシンプルな文章を書くことを心がけよう。
(読み手も、難しい言葉を難しいまま理解できるように歩み寄ってほしい)
編集後記
今回は、仕事ができる人の「しないこと」を6つピックした。
人生の中で「しないこと」を明確にして実践すると、効率的に時間を生み出すことができる。
手始めに、「ダラダラとSNSを見ない」「不要なもので部屋を散らかさない」といった手軽なところからはじめてみよう。
ただし、時間を捻出したとしても、その時間で無駄な行動やストレスのかかることをしたら本末転倒なので、気をつける。
本書ではさらに「23のしないことリスト<考え方編>」と「22のしないことリスト<テクニック編>」が紹介されているので、興味があったら読んでほしい。